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【UO小説】ヒナの旅行記No2 抜け殻の姫と死のアーティファクト

こんばんは
ヒビキです('ω')ノ

今日はUO小説の日です。
前回書いた、ヒナの旅行記の続編ですよー。

前作はこちら
【UO小説】ヒナの旅行記No1  ヒナ失せ物探しに会う


それでは、新作
【UO小説】ヒナの旅行記No2 抜け殻の姫と死のアーティファクト
をお楽しみください。
以下本編!

=============================

ヒナの旅行記No2
抜け殻の姫と死のアーティファクト


 その時、私は絶体絶命だった。

「アイアイサー、高波でさー」

「そうね、最ッ高にイカした嵐じゃない」

一人ではしゃいでいるのはクレア船長。迫りくる高波と暴風雨にさらされて船はぎしぎしと悲鳴を上げながら、海にもてあそばれるように揺れ狂っている。
船があっちへぐらり、こっちへぐらりと揺れるたびに、乗客である私たちはあっちへゴロゴロ、こっちへゴロゴロと、もみくちゃにされてる。

「船酔い、ってレベルじゃないよ、これはー」

 これは私の絶叫。
 その時、クレア船長が客室に飛び込んできた。

「総員退避! 板切れを抱いて海に飛び込んで!!!」

「え、ええええええ」

「もうこの船、沈ッむわよー」

「う、嘘ーーーーー」

 それからほどなく、私たちは板切れにしがみついて海に飛び込んだんだ。そこから先の記憶がない。気づいたら、穏やかな海の大きな船の、静かな船室にいた。

「ここは?」

「おや、気づいたようね」

 堂々たる風貌の女性が、私をのぞき込んできた。

「あなた、名前は?」

 私の名前は、

「ヒナ……、ヒナです」

「そう、ヒナ。無事だったみたいでよかったわ。嵐が過ぎたと思ったら漂流物と一緒にあなたが浮いていてね、思わず助けに飛び込んだってわけ。ま、嵐の後にはよくある話よ。とりあえず無事でよかったわ」

「ありがとうございます。……あなたは?」

「私はキャプテン・カタリーナ。ブリタニア王立艦隊の船長の一人よ。ま、いまは艦隊から外れて単独行動中なんだけどね」

「そ、そういえば。他のみんなは? クレア船長たちを見ませんでしたか?」

「いいえ。残念だけど、残骸と一緒に見つかったのはあなただけよ」

「そ、そうかぁ」

 単純に、海を渡るためだけに乗り込んだ船の船長だったけど、そうなってみるとそうなってみたで、なんだか不思議な感情に襲われたんだ。さっきまであんな元気にはしゃいでた人が、急にいなくなるなんてなぁ。
 キャプテン・カタリーナは優しく微笑むと、

「時期にシーマーケットに着くわ。そこで、大陸への船を探してもいいし、もしもあなたにできるなら、私に協力してくれてもいい。無理強いはしないわ」

「協力?」

「そう、あなたは私の協力者に適任なの。でも、あなた一人じゃ無理ね。シーマーケットに顔の知られていない協力者が欲しい。そんな協力者を、あと何人か見つけられないかしら? 例えば、あなたと同じような漂流者や、もぐりの船長。そんな人物が適任ね」

 ちょっと考えた。カタリーナ船長は私の命の恩人。なら、恩返しをしたい。

「喜んで」

 私は、カタリーナ船長と熱い握手を交わしたんだ。

 シーマーケットに降りると、そこはものすごい場所だった。もう、海の上の一大基地とでもいえばいいかな。とにかくスケールも人も、船も、魚も、怪しい人たちも、とにかく何もかもがブリタニア本土とは違ったんだ。

 とりあえず漂流者を探そう。私みたいな漂流者が行くとしたら、本土へ帰る船を探すか、酒場で食事でもとったりする。実際おなかがすいた。私は酒場へ行ってみたんだ。

「う、うう、ううう。うううううう」

 わかりやすくすすり泣いてる人がいた。肌は真っ白で、死人のよう。表情は見えないけど、間違いなく海の人じゃない。いきなり漂流者に当たったかな?

「こんにちは、お嬢さん。隣いいかしら?」

「誰、あなたは」

「私はヒナ。旅行者で旅人、今は、漂流者よ」

「そう、あなたも漂流者なの。私は、私は、私の名前もわからないの。何も思い出せないの」

 ビンゴ。この人は漂流者だ。それも、記憶喪失のとびっきりの漂流者だ。って、カタリーナ船長の企ての協力者になれるのかな? むしろ心配になってきた。まあでも、乗り掛かった船だ。いえ、乗せかかった船、って言った方がいいかも。

「実は、船乗りと知り合ってね。頼めば船に乗せてくれるかもしれない。よかったらあなたもどう?」

「いいの? どの船も、高い船代を請求してきてとても乗れないの。もしもその船に乗せてくれるなら、協力するわ。……仮に、あなたとあなたの船長が、何かを企んでるのだとしてもね」

 話が早い。

「いいわ、悪いようにしないからね」

 協力者、一人目。記憶喪失の抜け殻の姫。仮名はファサード(上っ面の意味)にした。

 次の協力者は、向こうからやってきた。

「あッらぁー。あんた、ヒナじゃない。生きてたのねー。だから海に飛び込めばいいッて言ッたのよ、あたしは」

「クレア船長!」

 このクレイジーな船長は、船が沈んだことを微塵も感じさせないでゲラゲラ笑ってた。そういえば、カタリーナ船長はもぐりの船長でもいいって言ってたよね?

「シーマーケット? いや、あたしは来たことがないねぇッ。ははーん、そういうこと? ヒナ、あんたに協力すれば、船が手に入りそうな予感がする。いいわ、取引しましょう」

 なんで、みんな、そろいもそろって察しがいいのだろう。

 協力者、二人目。クレイジー・キャプテン・クレア。

 それじゃ、カタリーナ船長のところへ戻ろうかな。なんて思ってたら、

「あー、いたいた。君がヒナ? もー、探したんだから。協力者は見つかった? あ、私はあなたの仲間よ。カタリーナ船長の華麗なる助手、モルグとは私のことよ。まー、かたっ苦しい挨拶は、あとあと。船長からの指令を伝えるわ。ターゲットは私掠艦マイアーヒ号。協力者たちと潜入して、航海日誌を奪ってきて。これは極秘よ。それじゃ、あとはがんばってねー。まったねー、ヒナ」

 りょーかい。

 それから、私たちは作戦を練った。クレア船長がめずらしくまじめにしゃべった。

「ま、キャプテン・カタリーナッて人も無茶苦茶いうねー。航海日誌の強奪ですッて? 見つかッたら極刑は免れないわねー。何より相手は私掠艦……ブリタニア王立艦隊公認の海賊船よ。もー、おッもしろいじゃないの」

 海賊、かぁ。以前、海賊につかまったことがあるけど、あれとは違うのかな。

「まったく質が違うわね」

 ファサードが語った。って、記憶喪失治ったのかしら?

「ただの海賊はそこらの盗賊や強盗と何ら変わらない。でも私掠海賊となると、海軍の雇われ海賊。軍人よ。訓練された海の殺戮集団なの」

 それは厄介な相手ね。ところで、マイアーヒ号の船長ってどんな人なんだろ?
 ファサードが答えた。

「酒場で見たことがある。ちょび髭の、いやらしい顔をした甲高い声の小男ね。サイアム船長って男。常に女を侍らせてるような女好きだったわ。私たちには好都合ね。ヒナと私は、年頃の女だし」

「はッはーん」

 クレア船長はにやりとすると、作戦を語った。



「似合ッてるわよー、ヒナ。見事な召使ねー」

「本当にこんな格好で行くの?」

「レッツゴーよー」

 私は大量のジャガイモを抱えると、船に堂々と乗り込んだ。この制服は、マイアーヒ号の召使が来てる服らしくて誰も怪しまなかった。てかさ、私掠艦なのに召使って変じゃない? イメージと会わないなぁ。
 なーんて思ってたら、あっさりと船長室にたどり着いた。入って驚いた。

「え」

 サイアム船長らしき男ががばたりと倒れていた。目は見開いていて、口はぽかっと開いている。ファサードが絡みつくように抱き着いていて首筋に、牙を立てていた。あれは、血を吸ってるのか。ファサードが気付いた。

「あら、ヒナ遅いじゃない。おなかすいたから食事。航海日誌ならこれよ。おなか一杯になったら帰るから、先に戻ってて」

「え、ええ」

 としか言いようがない。
 船長室から出ると、見覚えのある男が格好をつけて立ちふさがっていた。この胡散臭い冒険者は……

「おおっと、待ってもらおうか。お嬢ちゃん」

「失せ物探し、なんであんたがここに」

「サイアム船長は俺のクライアントでねぇ。ヒナみたいなコソ泥に、航海日誌を渡すわけには……ぶげぇっ!?」

 油断してる失せ物探しに私の前蹴りが決まった。金的、そこからの回し蹴り。

「ま、まて」

「待たない」

 こないだとはわけが違う。私のかかと落としが失せ物探しの脳天をぶち抜いた。
 やっぱりこいつ、弱い。

 失せ物探しをぼっこぼこに片付けると、私はしずしず立ち去った。

 私たち3人はさっそうとカタリーナ船長の元へ戻った。キャプテン・カタリーナは航海日誌をパラパラとめくると、

「なるほどねぇ、やっぱり――サイアム船長はワルね。血、おいしかった?」

「まずかったわ」

「でしょうねぇ。さあ、錨を上げて、帆を張って。目的地が判明したわ」

 私たちは風に吹かれるままに、その島へたどり着いた。

「航海日誌によれば、ここにそのアーティファクトがあるっていうけど……あれね」

 島の中央には、おぞましいマナの気配と、プカプカと浮いている石があった。あれは、

「マナの結晶石」

「あら、ヒナ知ってるのかしら」

 前に、失せ物探しにそそのかされて、水の結晶石を見つけた。あれと似てる。

「待ちなっ。お嬢ちゃん、そこまでだ」

「まあ、そういうことだ」

 振り返ると、失せ物探しと酒呑、そして、

「カタリーナ大尉ィっ!!」

 サイアム船長の甲高い声が響いた。海賊、いえ、海兵隊と思わしき面々を連れている。

「貴官が、わたくしの航海日誌に興味があるとは存じなかったですぞ。これは重大な違法行為だ。小官はァ、貴官を軍法会議にかけることォ提案いたしますぞォっ!」

「あらあら、サイアム大尉ではありませんか。少女にかじられた首筋がいたそうで何より。あなたこそ、少しはたしなみを身に着けるべきじゃないのかしら? それとも、この、死の結晶石に目がくらんだのかしら」

「それはこの冒険者が見つけたもの。小官はそれを買い取ったまで。これは、国の宝ですぞ」

「とんでもないこと。これは国を破滅させる恐ろしい兵器。私たちは、この死の結晶石を破壊しに来ました」

「そのようなことはさせない、死の力はわたくしのものですぞォっ」

 サイアム船長は死の結晶石に駆け寄って、吹き飛ばされた。ぞくりとした。ものすごいマナの爆発が起こり、私たちは全員、ごみくずのように吹き飛ばされた。
 ……な、なんだろう。なんだか……苦しい。

「……やっべえ、な。酒呑、……こいつが死の結晶石の力か。こればかりは俺も、年貢の納め時かもしれねえ……」

「……まずいな、失せ物。売る相手を……間違えたな」

 海兵隊たちがバタバタともがき苦しみ、動かなくなっていく。
 私はあたりを見渡す。

「……ファサード?」

 吸血鬼の少女は、ただひとり何事もなく平然と立っていた。

「そうだヒナ、私ひとつ思い出した。私、魂がないんだ」

「え?」

「魂がないから、生きてるけど生きてないから、死の力なんか及ばないんだ」

 抜け殻の姫は平然と死のアーティファクトに触れると、いともたやすく握りつぶした。

 大爆発が起きた。そして、私たちは救われた――



「カタリーナ大尉、ご苦労だった」

「ごきげんよう、キッド大佐」

「くっ、うぅぅ……」

 サイアム船長は捕らえられた。罪状は国家反逆罪。なんでも、オークの海賊と違法な取引を何度も繰り返し行っていたらしい。ついでに言うと、マナの結晶石を私物化しようとしたのも、何かしらの罪状に問われるかもしれないとのことだった。

「世の中、悪ぃ奴ははばからねえってことだな、酒呑」

「まあ、そういうことだ」

「よく言うわね、失せ物探し」

「ん? 俺は世紀の大発見をしただけだぜ。そして調査中に死にかけただけだ。断じて悪いことは一切しちゃいない」

「違いねえ」

「「がっはっはっ」」

「あっはっはっ」

 失せ物探しと酒呑の野太い笑い声。そして、細くて乾いた私の笑い声。

「あたしの船は戻ッてこないけどさー、キッド大佐ッて人からそれなりの手当てもらッたから、小船でも買ッてやり直すさー」

 とはクレア船長。ファサードは、

「結局、私の記憶は戻ってこない、魂もね」

 この真っ白な少女はどこか遠くを眺めてた。

 私たちは、カタリーナ船長とキッド大佐からお褒めの言葉と金一封を受け、堂々とブリタニア本土へ戻っていった。

「そういえば失せ物探し、あんたの名前なんていうの?」

「あ? 前にも名乗ったろ。忘れたか」

 失せ物探しは粛々と名乗った。

「失せ物探しのジョン・ドゥ。あなたの失くし物、探します」

「私の記憶と、魂は探せる?」

「ああ、どんなもんでも探してやるよ。金さえ出せばね」

「違いねえ」

「あー、波が高いぜー」

 私たちはこうして、元の道へ戻っていった。



 今度はどこへ、行こうかな?

旅人のヒナ――


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【UO小説】ヒナの旅行記No1  ヒナ失せ物探しに会う

こんばんは
ヒビキです('ω')ノ

今日はUO小説の日です。
興味がある人に概要だけざっくり書いておくと、
100%創作のUO冒険小説です。

アクションあり、胡散臭い冒険者居り、怪しい計画に取引があり、
謎のお宝ありと、
お約束のような内容です。

全体的にあっさりした塩ラーメン風味です。
でもコクが足りないんだなー(*´Д`)
そこは次回作にごきたいください。

それでは、以下本編になります。



====================



16歳の頃から好き好んで旅をしているけれど、気がついたらもう21歳にもなっていた。たまに実家に帰ると、親からもそろそろ落ち着きなさいとか言われる、そんな年頃だ。

落ち着く気はサラサラないけど、たまには足を休めるのもいいかもしれない。
いい機会だ。
これを機に、旅行記でも書いてみようと思う。

私の名前はヒナ。
旅行者で旅人でさすらい人だ。さすらい人は言い過ぎだけど。

どこから書こうかな。
そうだ、16歳。はじめての旅のことから書こう。

私の実家はユーの森の外れにある。どこへ行くにも歩かないといけない不便な場所だ。だから小さなころからフラフラ歩くのは慣れていて、気づけば歩くのが大好きになっていた。ユーの大瀧も私の庭みたいなものさ。

はじめての旅行じゃ出かけるときにだいぶ心配された。そりゃー、ここはブリタニア。弱肉強食の厳しい世界だ。でもね、私だって分かってる。幼い頃から護身術くらいは身につけてるさ。
体術に魔法、あとは神秘術だ。

自分から向かっていく度胸ならないけど、スケルトンとかモンバットくらいならラクラク追い払える。
だから大丈夫。そう思って自信満々に旅に出た。

向かう先はライキューム。場所はムーングロウ島の一角だ。

ワクワクしながらブリテインへ向かうと、船に乗り込んだ。
ここまでは順調。とーっても軽快な道のりだった。船に乗り込む前に、少し用心すればよかった。今になるとそう思える。

なぜかって?
街でも港でも、海賊の話でもちきりだったからだよ。

船は出港して程なく海賊船に拿捕されて、乗組員も乗客も一同奴隷として捕縛されたんだ。海賊船は何処ともしれない島へつくと、私達は牢屋へ繋がれた。

暗い牢屋。
かび臭くて、時々水滴がポタポタ落ちてくる。

「何が起きた」

「どうしてこんなことに」

みんな現実を受け入れられない顔をしてた。
私はどんな顔をしてたんだろう?
ただ、不安はなかった。多分脱出できるっていう得体のしれない自信があった。

牢屋に繋がれて程なく。
カッチャカッチャ音を立てて一人の男が牢屋の前をうろつき始めた。手で鍵のようなものをもてあそんでる。色々な牢屋を覗き込んで、私と目があった。

海賊かな?
いや、明らかに違う。古びた革鎧に小汚いボロ切れ。如何にも胡散臭そうな目つき。
直感的に分かった。冒険者だ。

「いよう、あんた」

冒険者は私を覗き込むように見ると声をかけてきた。

「海賊に捕まったのか。マヌケだね。港で情報を仕入れもせずに船に乗り込んだのかい?」

「それはどうも。マヌケで結構。あなた誰? 海賊じゃないわね。冒険者かなにかかしら」

「俺はお前が望むものを持っている。そんな態度取っていいのかい?」

「あんたみたいなチンケな冒険者が? 見くびらないでよね。それにこんなところの鍵持ってるならとっくに開けてるよね。なにが目的なの」

「お嬢ちゃん、いいね。俺の計画に必要なのは……あんたかもな。いいだろう、大人しくできるなら全員出してやる。その代わり騒ぐなよ。気づかれると困る」

ほどなく、私は牢屋から出ることができた。冒険者は私を値踏みするように見てる、いい気ならしない。冒険者は鍵をひょいっと、牢屋から出てきた男の人に投げて渡した。あとは勝手に出して回れっていうことだと思う。
そして、冒険者はファイティングポーズをとると、

「お嬢ちゃん、少しはできるんだろ? 見せてみろよ」

「いいけど、怪我しないでよね」

私も構える。冒険者は手のひらで私を招く。すかさずジャブ。難なく交わされる。迷いなくジャブを何発か打つ。あたりもしない、かすりもしない。そりゃそうだよ、ただのけん制だ。
冒険者のフットワークが始まった。顎をガードし、一気に距離を詰めてくる。私はけん制、ジャブを打つ。冒険者はかわすと同時にパンチを見舞ってきた。見切ってる、拳で弾く。けれど冒険者のラッシュが来る。
キツイ。
私はインファイターじゃない。バックステップで逃げる。冒険者の追撃。まずい、このままじゃ下がるスペースがなくなる。うって変わって反撃に出る。私のパンチは、あっさりかわされる。相手のパンチが迫る。かわせない。とっさに踏み込んで肘鉄を入れた。

「ぶへぇっ」

当たった。ダメージあり。冒険者が崩れたところへ、前蹴りをいれる。金的、決まった。
追撃の回し蹴りを叩き入れようとしたところで、

「タ、タンマっ」

冒険者は降参のポーズ。
どうでもいい遊びは終わった。

「……お嬢ちゃん、やるな。名前は?」

「ヒナ」

冒険者はニヤリと笑う。肘鉄を入れたところが腫れている。とても痛そう。

「ヒナ、俺の計画に乗るなら……ここから出してやろう。意味は分かるな? 海賊に囚われちまったお前らの救出をしてやるっていうんだ。協力しろ」

「なによ、あなた救助に来たのに自分がやられてるじゃないの」

違う違う、と冒険者はかぶりを振る。

「これは投資。ヒナ、いい肘鉄食らわせてもらったよ。おかげで俺にはいい協力相手が見つかった。お前は海賊島からの脱出ができる。これはビジネスだ。俺とお前の、いいところ取りのな」

魂胆は見えてる。私を乗せて協力させるつもりだ。何が目的だろう、わからないのが怖い。ただ、この島から脱出するには、この冒険者に協力する以外の道が見いだせない。となると、

「何をすればいいの?」

「のろしを上げてくれ。この地図、見方はわかるか? そう、この場所だ。この場所に海賊ののろしがある。のろしが、救助部隊突入の合図なんだ。ただね、俺が行けない理由がある。俺はここにいる、戦えない連中を連れて行かないといけない。お前にしか頼めないんだ」

「素手でやれっていうの? 無理言わないでよ」

「この二冊の本、ヒナのスペルブックだろう? 受け取りな」

「ありがとう」

私は受け取ったスペルブックをパラパラめくる。見覚えのある文字、懐かしい感触、そして匂い。最後に欠損してるページ。間違いない、私の物だ。
私は自分の帽子をかぶりなおした。魔術師の帽子、お母さんからもらったお古だよ。そして服の下に身にまとってる皮鎧。すべてマジックが込められた魔法使い向けの装備一式。

「完全武装ってわけだな。頑張れよ、ヒナ」

「ところで、あなたの名前は?」

「ジョン・ドゥ(名無しの権兵衛の意味)」

「偽名? そりゃないわよ」

「あいにくとこれが本名でね。信じられないならちゃんと名乗ろう。俺は、」

冒険者は静々と名乗った。

「失せ物探しのジョン・ドゥ。あなたの失くし物、探します」

「よろしく、失せ物探し」

偽名より通り名のほうがいい。私は軽くあいさつすると、計画の場所へ向かった。
外は日の出前で暗がり。しかも海賊たちの警備はずさんなのか、ちゃんとした見張りがいなかった。まあ、牢屋の出口のすぐわきには海賊の死体が転がってたけど。見事な手口で、海賊はなぜ自分が死んだのかも理解できなかったと思う。

でも、順調だったのはのろしの側へ来るまで。見張りが二人……か。隠れてのろしを上げるのは無理だろうし、おびき寄せて騒がれると、救助に来た失せ物探しと救難中の面々が危ない。となると、サクッと倒すしかない。
変な自信が、私にはあった。

物陰。小声で詠唱する。

「Corp Por」

私は堂々と姿を現す。見張りは気づいていない。魔法の射程内へ入った。エナジーボルトの魔法を解放する。青いエネルギーの弾丸が飛翔する。昔、墓場でスケルトン相手に使った時は大穴を開けて吹き飛ばしたっけ。人間に使うとどうなるのかな? 胸に命中した。青白いほむらが熾る。胸に大穴が空いて、肉片と骨片が背中から噴き出した。出血。見張りはガクリと両ひざをつくと苦悶の表情を浮かべて倒れた。
もう一人の見張りは事態が呑み込めていないのか動かない。すかさず、

「Coop Por」

青いエネルギーの弾丸が、もう一人の見張りを吹き飛ばした。
簡単すぎる。二人とも、叫び声ひとつあげなかった。

私は日が出るのを待ってのろしを上げた。救援部隊が押し寄せると、海賊島は修羅場と化した。
ちょーっとドキドキしたけど、私の仕事はおしまい。あとは落ち着いたのを見計らって、堂々と門から歩いて出た。救援部隊が私を助けに来る。横を見ると、失せ物探しがニヤニヤして私のことを見送っていた。

「もう大丈夫、この船でブリテインへ帰れますよ」

船に乗ると、ブリタニア騎士団の頼もしい勇士が私たちを見守ってた。ふへぇ、なんだか急に脱力して、私はへたり込んでしまった。
旅って怖いんだなぁ、なんて思ってたら肩を叩かれた。

「いよっ、ヒナ」

「失せ物探し」

「初仕事ご苦労。ついでにもう一仕事どうだい? それともこんな船で安全安心お気楽に本土へ逃げかえる気か?」

むう、逃げかえる。ちょっと自尊心をほじくり返されるいわれだけど、帰るのが一番でしょう。家にはお父さんもお母さんもお姉ちゃん達も待っているのだ。

「実は面白い話がある。海賊からお前さんたちを助けたのはついででな、本当の目的はこっちなんだ」

「騎士団に海賊討伐させて、その隙にお宝を持ってく気だったの? あら、何かしらその顔。見抜かれたなんて言うんじゃないでしょうね、それくらい誰だってわかるわよ」

「まあこっちこい」

失せ物探しに連れられて、船のデッキの目立たない場所へ来た。なんでも、

「とんでもないお宝がある。な、酒吞(しゅてん)」

「おう」

失せ物探しの隣には、めちゃくちゃガタイのいいイカにも戦士ですっていう男がいた。

「はじめまして、酒吞さん」

「酒吞でいい。さんはいらねえ。あんたがヒナか、よろしくな」

失せ物探しが話しだした。

「お宝といっても、物じゃない。この島だ」

観光地か何かなのかしら。

「違う違う。あんたも魔法使いならマナくらい知ってるだろ? この島は、マナの節なんだ」

マナの節。確か、マナが異様に貯蔵されている場所、私はそう認識してる。でもマナの節なんかそんなに珍しいものじゃないし、それがどうしたのだろう。

失せ物探しは下品に笑う。酒吞は酒瓶を口につけるとゴクリと飲んだ。

「さっきは物じゃないって言ったが、やっぱり『モノ』かもな」

「なによそれ。もったいぶらないでよ」

「マナの結晶があるかもしれない」

それは珍しい。マナの結晶といえば、まだまだ研究途上にある珍品。よくわからない代物だって、魔法学校で聞いたことがある。

「見つければ魔法ギルドに高く売れるぜ。ヒナも興味あるだろう?」

やっぱりこの失せ物探しは胡散臭い。

「そんなおいしい話、なんで私に話すのかしら?」

やはり、下品に笑った。

「ま、最低でも3人はいるからだ。来ればわかる。嫌なら他の奴を当たるさ。冒険者稼業をやってないのにはピンと来ないかもしれないが、3人はいないと手に負えないギミックってな結構あるもんだぜ。なあ、酒吞」

「ああ、そうだな」

「ふーん」

私の冷たいまなざし。やっぱりこの冒険者コンビは胡散臭い。でも、なんだか面白そうでもある。せっかくのチャンス逃すのか、踏み込んでみるのか。

「取り分は?」

「きれいに3等分。こんなクリーンな取引他にないぜ。命の恩人が、フェアな取引をってんだ」

「失せ物探し、本気か? こんな嬢ちゃんはした金渡しときゃいいだろ」

とは酒吞。怪しい……怪しくない? この二人怪しい。でも失せ物探しが助けてくれたのは本当。なら、この話も信じてみてもいいかも。

「いいわ。やりましょう」



こうして私たち3人は島の中央を目指した。洞窟をくぐって、狭い道を進むと3本の柱が見えた。なに、このいかにも怪しい柱は……。

「よし、酒吞、ヒナ。いち、にの、さんで柱を押すぞ」

「本当にそんなんでいいのー」

「こういう仕掛けってのはな、単純なもんなんだよ。ほら、そっち行け」

「はーい。いいわよ」

「1、2、3……押せ!」

柱を押すと、ゴゴゴゴゴゴゴとうなり声をあげて、石が私たち三人の上に落ちてきた。

「いったーい」

「なんだこりゃ」

「コントだな」

それでも失せ物探しは力説する。これは兆候だ、この柱はやはり怪しい。押し方を変えよう。

そして、コントを繰り返すこと数回……。やがて、隠し扉が開いた。ちゃちいよ……。

「ほらな、言ったろ酒吞。俺の予想通りだ」

「そうだな、失せ物」

この冒険者二人は子供の用に嬉々として喜ぶと、隠し通路の奥へそそくさと走りこんでいった。そこには、恐ろしいトラップも何もしかけられていなかった。なんでー。

「そーゆーもんなんだよ」

失せ物探しがエラそうにおっしゃる。コントの罠に引っかかったのはどなたのせいなのでしょうか? 
奥へ奥へ踏み込むと、何か、水の音がする。どんどん水の音は強くなっていく。洞窟で水の方へ進むのは危険だ。酒呑が察した。

「やばいか?」

「行くぞ、酒吞。ヒナもついてこい」

「ちょっ、待ってよ」

「なっ、これは」

失せ物探しが絶句した。そこには、大洞窟一面に水のカーテンがかかっていた。

「きれー」

思わず見とれた。失せ物探しも酒吞もほれぼれとしている。天然の絶景だった。

「待て」

失せ物探しが何かを見つけた。水のカーテンの中央に、丸い石がぷかぷかと宙に浮いていた。これが、

「マナの結晶だ」

失せ物探しがにやりとした。

「やったな、酒吞」

「おう」

二人が手と手を合わせハイタッチする。そしてすたすたと立ち去っていく。

「え、なんで」

「あとは魔術師ギルドの仕事だ。俺らは帰るぞ。言っとくけどな、ヒナ。ここにあるものに指一本触れるなよ。そしたらお前にはびた一文やらねえ」

「なによそれ」

「これが冒険ってもんだ。な、酒吞」

「違いねえ。こんな嬢ちゃんにはまだわからねえのも無理はねえな」

「「がっはっはっ」」

「あっはっはっ」

二人の太い笑い声。そして私のか細い乾いた笑い声。こうして私のはじめての冒険は、何事もなく終わった。本当に、本当に、本当に、何事もなく無事に終わってしまった。



こうしてひとつの旅と冒険を終えて、私はライキュームへたどり着いた。
勉強に励む私の元へ、一通の手紙が届いた。差出人は名無しの権兵衛こと失せ物探しだった。

「どれどれ」

期待して開いたけど、すっごい詰まんない事務的な手紙だった。冒険者って、もっと詩文的なものを書くんじゃないのかなぁ。なんて、私は冒険に対してのとんでもない肩透かしを食らったよ。

でも、最後にいいことが書いてあった。

PS.
じゃあな、ヒナ。あんたは旅を続けろよ。いつかは旅人のヒナって名前で旅行記でも書いてくれ。

「詰まんない。けど、面白い男たちだったな」

私は手紙を放り投げると、ライキュームの空を見上げた。



次は、どこへ行こうかな。

旅人のヒナ――
プロフィール

Hibiki

Author:Hibiki
【author】せまほ

UOプレイヤーのひとり。
AOSごろからSAくらいまで真面目に遊んでた。
その後は入ったり入らなかったりの日々。
のほほんと遊んでます。


【メイン】Hibiki

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